餅を乞うて山潮を告げた山の神
どんな伝承か
根丸の草分けの小字にはけのもとがある。昔、はけの谷の麓に二、三軒の家があったが、山が荒れて田畑が流されるようになり、一軒だけが残った。年の暮れ、餅を搗き終えた主人が囲炉裏にあたっていると、白髪で赤ら顔の見知らぬ男が横座に坐って餅を求めた。翌晩も来て餅を求め、大晦日には丸い白石を餅の代わりに与えた。男はもう餅はいらぬと言い、近く山潮が起きて谷も家も流されるから早く立ち去れと告げ、自分はこの山の山の神だと名乗って天窓から消えた。正月が明けると一家は子まるへ移り、七草の頃に大きな音とともに山崩れが起きてはけの谷は埋まった。根丸の山本家は今も通称をはけといい、山の神は浜宮の裏山に移して祀られている。
原典より
数少ない根丸の草分ともいうべき小字の一つにはけのもとがある。—— 日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第12巻』は、四国四県(香川・愛媛・徳島・高知)の伝説を話型ごとに集めた伝説集成の一巻である。神々の争いや大人の足跡、弘法大師の彫り残しや麦の種、英雄の誕生、長者、人柱、蛇聟、狼の報恩、化猫退治、首切れ馬、夜泣石、地蔵の霊験などを、町村誌や地方の伝説集、昭和五十三年度立命館大学説話文学研究会の採集調査稿から採る。百三十九話に通し番号を付け、各話に伝承地と出典、高木・柳田の分類名を添え、県別の〔類話〕と〔文献〕を続ける。