山賤の一首に引き返した西行峠
どんな伝承か
甲斐国南巨摩郡の西行峠は、駿河から富士川に沿って甲斐へ抜ける道にある。昔、西行法師が歌の修行で諸国をめぐり、自分ほどの歌よみはいないと得意になってこの山道へさしかかると、一人の山賤に出会った。甲斐に歌を詠む者はいるかと問うと、山賤はその場で一首を返した。行くときは蕾んでいた花が、帰りには開いていたという意で、桶とじとは桜のことだという。意味の取れなかった西行は、山賤でさえこれほどならと恐れをなし、修行を積み直してから来ようと引き返した。峠の名はこれに由来する。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。