沢口の若者と萩に詠んだ一句
どんな伝承か
西行峠へ向かう道筋の話である。当時は集落のなかの畑あいの細い道が甲州街道であり、西行の部落も六軒ほどしかなかったという。村中を通って沢口という所まで来ると、鎌を持った若者に出会った。何をしに行くのかと問うと、冬青む夏枯れ草を刈りに行くのだと返され、法師はすっかり感心した。さらに進むと畑を耕す小僧がいて、今朝からどれだけ耕したかと尋ねると、坊さんは今朝から何足歩いたかと言い返され、驚いて峠のほうへ行ってしまった。峠では萩の茂る草原で用を足したところ萩が跳ね上がり、旅は幾度もしたが萩に跳ね返されたのは初めてだ、と一句詠んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。