人魚の刺身を食べた名主の孫娘
どんな伝承か
昔、武蔵の峰の八幡から下総の国府台までは海で、この辺りは泥水であったという。上総から魚を売りに来ていた爺が、礼にと村人を家へ招いた。網元の長者屋敷で馳走を待つ間、厠へ立った一人が俎に人の首を見た。人魚だと騒いだ村人は刺身に手を付けず、土産に持たされた分も帰りの船から捨てたが、名主だけは懐に入れたまま帰った。それを孫娘が食べてしまい、娘は年をとらぬまま嫁げず、尼となって若狭へ流れ八百年生きたという。中馬場の山王塚に比丘尼の墓石がある。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。