両手で百人一首を書いた貉僧
どんな伝承か
建長寺の住職は貉が化けたものだといわれる。この貉僧は道志へ来て久保の大家に一か月ものあいだ逗留し、礼として両手に筆を取り、小倉百人一首を書き上げた。左右の手で右向きの文字と左向きの文字を書き分けた珍しい書物である。のちにこの貉僧は駿河の蒲原の宿場で猛犬に襲われ、路上で死んだ。死後七夜目に、千年を経た古貉の姿に変わったと伝えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。