嫗岳の穴に消えた大蛇の子
どんな伝承か
日向国の塩田に大太夫という徳のある人がいて、花の本という美しい娘を後園の屋敷に囲って育てていた。ある秋、高貴な装いの美男が毎夜通うようになり、娘は心を寄せた。露見を恐れた母は、苧環の糸を通した針を男の衿に刺させ、翌朝家人を連れて糸をたどると、日向と豊後の境の嫗岳の大穴に至った。穴の中の相手は大蛇で、針の傷で動けぬと嘆きつつ姿を現し、娘の腹に宿った男子は弓矢に優れた者になるから育てよと言い残して死んだ。生まれた子は素足で野山を駆けて足に皹が絶えず、あかがり大弥太と呼ばれた。その五代の孫が尾形三郎惟義だという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第13巻(山中耕作・宮地武彦(執筆・整理)/荒木博之(解説)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第13巻――北九州(福岡・大分・佐賀・長崎)』は、福岡・大分を山中耕作、佐賀・長崎を宮地武彦が執筆・整理し、荒木博之が解説を担った伝説資料集の一巻である。姫島、うつぼ舟、百合若大臣、黒髪山の大蛇退治、平家谷、炭焼小五郎、河童、白米城など、北九州四県に伝わる伝説を題目ごとに収める。各題目は口承を重んじて選んだ例話を冒頭に据え、県別の類話を梗概にして伝承地と出典名を添え、近世以後の史料を文献として抜き出す編み方をとる。