飴を買う女が湧かせた井戸
どんな伝承か
長崎の麹屋町の角に飴屋があった。ある夏の夜、素足に浴衣がけの女が足音もなく店先に立ち、青白い手で一文銭を差し出して飴を求めた。女は毎夜きまった時刻に現れ、店の者は背筋が冷えた。あるとき若者があとをつけると、女は伊良林町の光源寺の門前で消え、墓場から赤子の泣き声がした。掘り起こすと、先日葬った死女から赤子が生まれていたという。のち女の幽霊が飴屋の主人の枕辺に立って礼に水を出すと約し、幽霊井戸が湧いた。
原典より
むかし、長崎市麹屋町の角に飴屋があった。—— 日本伝説大系 第13巻(山中耕作・宮地武彦(執筆・整理)/荒木博之(解説)・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第13巻(山中耕作・宮地武彦(執筆・整理)/荒木博之(解説)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第13巻――北九州(福岡・大分・佐賀・長崎)』は、福岡・大分を山中耕作、佐賀・長崎を宮地武彦が執筆・整理し、荒木博之が解説を担った伝説資料集の一巻である。姫島、うつぼ舟、百合若大臣、黒髪山の大蛇退治、平家谷、炭焼小五郎、河童、白米城など、北九州四県に伝わる伝説を題目ごとに収める。各題目は口承を重んじて選んだ例話を冒頭に据え、県別の類話を梗概にして伝承地と出典名を添え、近世以後の史料を文献として抜き出す編み方をとる。