天狗に角力を授かった稲妻大蔵
どんな伝承か
元禄から宝永の頃、諫早の土師ノ尾に一組の夫婦がいて、朝晩に八天狗へ子を授かるよう祈っていた。ある夜、天狗が空から降りて懐に入る夢を見た翌日、丈夫な男の子が生まれたので、天狗の授け子だと喜んで大蔵と名づけた。大蔵は幼い頃から力が強く、十余歳で八天岳へ草取りに通ううち、天狗が現れて角力の道を授け、帰る刻には草が山と刈り集められていた。やがて稲妻と名乗って江戸へ上り、日本一の力士と組み合って目白の裏手で勝ち、毒殺の企ても退けたが、相手を憐れんで一番を譲ってからは天狗が離れ、晩年は郷里で農を営んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第13巻(山中耕作・宮地武彦(執筆・整理)/荒木博之(解説)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第13巻――北九州(福岡・大分・佐賀・長崎)』は、福岡・大分を山中耕作、佐賀・長崎を宮地武彦が執筆・整理し、荒木博之が解説を担った伝説資料集の一巻である。姫島、うつぼ舟、百合若大臣、黒髪山の大蛇退治、平家谷、炭焼小五郎、河童、白米城など、北九州四県に伝わる伝説を題目ごとに収める。各題目は口承を重んじて選んだ例話を冒頭に据え、県別の類話を梗概にして伝承地と出典名を添え、近世以後の史料を文献として抜き出す編み方をとる。