有王丸が仕えた硫黄島の日々
どんな伝承か
薩摩の坤の海上にある硫黄島は高い山があって常に燃え、硫黄を産する。俊寛僧都はここに流された。近侍の童に有王丸という者があり、俊寛の妻子に仕えて忠勤を怠らなかった。やがて妻も病で世を去り、残された一人の娘を一門のもとへ預けると、有王は遠く波濤を越えて島に渡り、僧都に会って都の消息を告げた。僧都は深い志を忘れまいと喜び、早く帰って娘に自分の存命を伝えよと言う。有王は承知せず、硫黄を採り海藻を拾って商船の来るのを待ち、交易して主君の飢えを助けた。しかし二十三日にして俊寛は世を去り、有王は都へ帰って娘に事の次第を語り、出家して菩提を弔ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。