十と言うまで数えた女中フキの井戸
どんな伝承か
串木野市の児玉という富豪の家には代々伝わる高価な皿があり、主人はこれを割る者があれば殺すと公言していた。フキという女中がその皿の一枚を誤って割ってしまい、みずから井戸に身を投げて死んだ。その後、夜になると井戸から「一つ、二つ」と皿を数える声が聞こえ、九つまで数えるとまた一つに戻るということが続いた。ある夜、主人が「十」と唱えたところ、声はぴたりと止んだという。井戸は埋められて屋敷神として祀られ、その跡に生えた草はフキと呼ばれるようになったと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。