高潮を免れた多良間の夫婦
どんな伝承か
むかし宮古の多良間島に一組の夫婦がいた。夫を伊知乃蘆、妻を姥保那末屋といい、二人とも心正直で誠実、道を重んじ、父母によく仕え、兄弟とも睦まじく、人に情けをかけて悪事をしなかったという。ある日、ほかの夫婦数十人とともに嶺のあいだへ出て田畑を耕していたところ、海の水があふれて白波が天を覆い、居合わせた人々はみな波にさらわれて海に沈んだ。ただこの夫婦だけが天の助けを得て災いを免れ、命を全うした。のちに一男一女を生み、男を土原大殿といい、娘は聡明で美しく、人々に称えられたと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第15巻(山下欣一・遠藤庄治・福田晃(編集執筆)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第15巻』は、山下欣一・遠藤庄治・福田晃が奄美・沖縄本島・沖縄先島の編集執筆を分担し、福田晃が全体をまとめた伝説集である。島々の口承伝説を、市町村の民話集や大学の口承文芸研究会の採集稿、近世の文献から集め、天地や人類の始まり、島建ての神、キジムナー、蛇婿、津波、御嶽や墓の由来などを収める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、類話は地域別に配列する。