女中の身代わりに斬られた首斬地蔵
どんな伝承か
味鋺の村の一の曽に、五左エ門というたいへん気短かな郷士がいた。この家の女中は無理な仕事にも二つ返事で精を出し、気立ても優しく、朝晩近くの地蔵へ参ることを欠かさなかったが、五左エ門の気には入らない。ある夜、腹を立てた五左エ門は女中の部屋へ押し入り、眠っている女中めがけて斬りつけた。たしかな手応えがあったが、女中には少しの傷もなかった。翌朝、女中がいつものように参ると、地蔵の体が袈裟斬りに真二つになっていた。五左エ門は驚き、それまでの悪い考えや行いを恥じて優しい人に生まれ変わったようになった。石像は約九十センチで文政の年号がある。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。