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幼子の身代わりに首を差し出した医師賀川肇

所在地京都府京都市上京区
年代文久二年十二月二十九日夜
登場賀川肇、千種有文、一橋慶喜、激徒、賀川肇の主人、首を届けられた
出典奇談全集 現代篇

どんな伝承か

その月の二十九日の夜、京都下立売千本東入にある、千種三位有文の家臣で医師の賀川肇の家へ数人の激徒が押し入った。激徒は家の者を捕らえて肇の居場所を言わせようとしたが口を割らず、縛って火を近づけ、天井から吊るして責めても何も言わない。そこで傍らにいた肇の幼い子をつかまえて刀を向けると、肇は我が子かわいさに出て来て、何も知らない子は助けてくれと言い、自ら首を差し出した。激徒は首と両手を斬り取って持ち去り、壁に罪状を書き残した。首は一橋慶喜の宿所へ、手は千種家と岩倉家へ封書を添えて届けられ、下女らが死をもって主人の居場所を隠したことは褒められたという。

原典より

肇 我が子の愛に牽かされて出てて、『どうか何も知らない小見は助けてくれ、』と、デつて激徒たちに其の首を授けた。—— 奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集) より引用
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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集)

『奇談全集 現代篇』は、田中貢太郎が幕末から大正にかけての事件や奇談を読み物に仕立てた作品集である。明治十一年に相模の真土村で起きた松木騒動、大正十五年に千葉の久賀村一帯で起きた鬼熊の事件、香取郡の連続殺人、伊賀上野の破獄、京都の天誅などを、記録や関係者の話をもとに描き、松木騒動には筆者が大正六年に現地を訪ねた補遺を付す。播磨屋橋遺聞のように、筆者自身が創作と断る話も含む。

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