供養を求めた浪人の霊と石神様
どんな伝承か
北設楽郡下津具村、いまの津具村の四の子から五町ほど、だらだら坂を登りきった所を堀割という。県道が小山を掘り割って通っており、その脇に石神様がある。昔、伊奈街道を歩いてきたみすぼらしい浪人の父娘が、ここまで来て飢えと疲れで倒れた。親切な村人に救われ、小屋を建ててもらい食物も恵まれたが、父親は十日ほどで世を去った。娘は葬式を済ませると巡礼となって廻国の旅に立ち、数年後に墓参りに帰ったきり戻らなかった。やがて村人が墓を忘れた頃、悪いはやり病が村を襲い、村長の夢枕に浪人が現れ、年に一度でよいから供養してくれれば病を鎮めようと告げた。ほこらを建てて霊を慰めると病は止み、今も年に一度の供養が欠かされない。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。