そろばん新八
どんな伝承か
三輪村(今の東栄町)の奈根に住んでいた新八つあは、たいへんな算盤の名人だったという。住まいは猪の落し穴のような粗末な小屋で、ときどきふらりと家出しては一年も二年も戻らず、帰ってきてもすぐまた姿を消した。ある年、村の衆が善光寺参りに行くと新八つあに出会い、算盤の指南をして西国も奥州も四国も廻っていたと語った。びた銭一文を二万桁以上に細かく割り、箪笥の引き出しの鍵も算盤をはじいて開けてしまったと、村中の評判だったと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))
『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。