離れた恋人を映す男井戸と女井戸
どんな伝承か
秩父橋を渡った尾田蒔の寺尾には、尾田蒔支所を挟んで北に女井戸、南に男井戸という二つの井戸がある。男井戸は札所二十一番の門前宿だった東屋の井戸で、今は個人の庭の井戸となっているが、水神の石宮や苔むした石が残り、どんな日照りにも涸れないという。女井戸は今は飲み水には使われず、用水池として近くの田の水源になっている。昔、この村に将来を誓った若い男女がいたが、家の都合で二人とも故郷を離れることになった。そこで若者は女井戸に、娘は男井戸に顔を映して互いを思おうと約束して旅立った。それで二つの井戸はいつも澄み、涸れないのだという。
原典より
旧秩父市から荒川の清流に架せられた名橋秩父橋を渡りますと、尾田蒔の寺尾という所に出ます。—— 秩父の伝説と方言 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父の伝説と方言
『秩父の伝説と方言』は、秩父市教育長鶴沢福松の序を付し、編集委員が執筆整理にあたって編んだ秩父地方の伝説と方言の集成である。秩父市と秩父郡に伝わる伝説を集め、武甲山麓のジジイ・ババア石、橋立鍾乳洞の悪龍、畠山重忠や坂上田村麻呂にまつわる話、伐ると祟る天狗松などを語り口調で記す。伝説は石・水・塚・屋敷跡・山と人物・地名・社寺および城跡・木に関する八つの部に分け、話によっては他地方の類話を注記する。