猪に導かれた尊と甘酒こぼし
どんな伝承か
秩父荒川の熊野神社では、七月二十五日の例祭に境内へ甘酒の大樽を据え、神輿の担ぎ手が小桶で汲んで掛け合う甘酒こぼしが行われる。伝えでは、景行天皇四十一年、日本武尊が甲斐から雁坂峠を越えて三峰山へ向かう途中、猪鼻の集落で一匹の猪に出くわし、後を追って賊の隠れ家を見つけ残党を討った。尊は神の導きと喜んでこの地に大神を祀り、これが熊野神社の始まりという。里人が礼に捧げた甘酒を尊はたいそう喜んだ。のち天平八年、疫病の流行に葛城連好久卿が三峰参詣の途中でこの社にも祈り、以来甘酒を供えて疫病を払う祭りになったと伝わる。
原典より
最近奇祭として各新聞に紹介された、秩父荒川の熊野神社の「甘酒こぼし」は、その起りも古く、日本武尊にまつわるものと言われております。—— 秩父の伝説と方言 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父の伝説と方言
『秩父の伝説と方言』は、秩父市教育長鶴沢福松の序を付し、編集委員が執筆整理にあたって編んだ秩父地方の伝説と方言の集成である。秩父市と秩父郡に伝わる伝説を集め、武甲山麓のジジイ・ババア石、橋立鍾乳洞の悪龍、畠山重忠や坂上田村麻呂にまつわる話、伐ると祟る天狗松などを語り口調で記す。伝説は石・水・塚・屋敷跡・山と人物・地名・社寺および城跡・木に関する八つの部に分け、話によっては他地方の類話を注記する。