盲目の母の目を開いた明智寺の観音
どんな伝承か
秩父郡横瀬村の中郷に、明星山明智寺という寺がある。天正の頃、横瀬の里に兵衛という親思いの少年がいて、目の見えない母の手を引いて毎日明智寺の観音に参っていた。ある日、いつものように観音の前に立つと、どこからともなく一人の僧が現れ、ある経文の句を唱えれば必ず仏の恵みがあると少年に教えて去った。一週間ほどたったある朝、観音の前に立った母の目が不意に開き、ありがたい姿を自分の目で拝むことができた。この孝行話は領主の耳にも届き、感じ入った領主は兵衛を召して田畑を与えた。明智寺が明星山を山号とするようになったのはこれからだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父の伝説と方言
『秩父の伝説と方言』は、秩父市教育長鶴沢福松の序を付し、編集委員が執筆整理にあたって編んだ秩父地方の伝説と方言の集成である。秩父市と秩父郡に伝わる伝説を集め、武甲山麓のジジイ・ババア石、橋立鍾乳洞の悪龍、畠山重忠や坂上田村麻呂にまつわる話、伐ると祟る天狗松などを語り口調で記す。伝説は石・水・塚・屋敷跡・山と人物・地名・社寺および城跡・木に関する八つの部に分け、話によっては他地方の類話を注記する。