平家の官女おまきを弔う老桜
どんな伝承か
秩父市尾田蒔の寺尾のうち田中という所に、おまき桜と呼ばれる老桜がある。尾田蒔支所に近い麦畑の一角で、荒川の流れを見下ろし高篠山や武甲山を望む場所にあり、高さ八、九メートルの木は根元が朽ちて空洞となり、大石をいくつも抱え込んでいる。そばには土地の人が山王さまと呼ぶ石宮がある。源平の戦いで平家が敗れて一族が散り散りになった折、官女のおまきも縁を頼って秩父へ落ちてきたが、源氏をはばかる村人は誰も助けず、自ら食を得るすべも知らない彼女はこの地で亡くなった。赤い絹の着物を着ていたという。最期の場所にあった桜を村人はおまき桜と名づけ、その霊を弔ったと伝える。
原典より
秩父市尾田蒔の寺尾地内、田中という所におまき桜と呼ぶ老木があります。—— 秩父の伝説と方言 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父の伝説と方言
『秩父の伝説と方言』は、秩父市教育長鶴沢福松の序を付し、編集委員が執筆整理にあたって編んだ秩父地方の伝説と方言の集成である。秩父市と秩父郡に伝わる伝説を集め、武甲山麓のジジイ・ババア石、橋立鍾乳洞の悪龍、畠山重忠や坂上田村麻呂にまつわる話、伐ると祟る天狗松などを語り口調で記す。伝説は石・水・塚・屋敷跡・山と人物・地名・社寺および城跡・木に関する八つの部に分け、話によっては他地方の類話を注記する。