問屋に逗留した狐の絵かき
どんな伝承か
中条の問屋に、一人の絵かきが滞在していた。常に奥座敷に閉じこもって熱心に絵を描き続け、外出もせず、ことに犬を嫌って放し飼いをしないよう断っていた。食事も勝手にするからと言って、給仕の者を部屋に入れなかった。あるとき給仕の女が、もう食事も終わった頃と膳を下げに行き、ふすまを細目に開けてうかがうと、大きな獣が膳の物を食っている。女は肝をつぶして逃げ帰り主人に告げた。主人は女に口止めしたが、絵かきの方も気づいたらしく、急に大豆生田の酒屋へ行くと言って駕籠を命じ、たれを下げさせて門を出た。すると一匹の大犬が現れて突然駕籠に飛びかかった。中を調べると、一匹の老狐が首から血を吹いて死んでいたという。
原典より
中条の問屋に滞在している、絵かきがあった。—— 韮崎市の民話伝説(韮崎市教育委員会・1967年(昭和42年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
韮崎市の民話伝説(韮崎市教育委員会・1967年(昭和42年))
『韮崎市の民話伝説』は、韮崎市教育委員会が昭和四十二年に発行した民話・伝説集である。韮崎・円野・中田・穴山・藤井・神山・穂坂・清哲・旭・大草・竜岡の十一町で民俗資料調査員が集めた百六十八話を収め、武田信玄・勝頼や鎮西八郎為朝、弘法大師の話、山の神のたたりや化かされた話などに話者名や『裏見寒話』などの出典を添える。巻頭に昔話と伝説の解説を置き、本文を木・石・水・塚・坂峠・山・谷沢・屋敷跡城址・祠堂・その他の十部に分ける。