三枚床に立つ細脛の大入道
どんな伝承か
今から八十年ばかり前、入生田の近野善兵工が三十代の頃のことである。ある秋の日、用事を済ませて糠野目から家路につき、萱野を通って三枚床にさしかかったのは午前二時過ぎであった。三枚床の大きな松の木のあたりは、皆から実に寂しい所だと言われていた。善兵工がその松の木に近づくと、暗がりから身の丈八尺ばかりの大入道がぬっと現れ、道を塞いで立っていた。体には長い毛がもしゃもしゃと生え、にたにたと笑って見下ろしている。足を見れば脛が細く、部落の者が見たという細脛の怪物だと思い当たり、腰の一刀を抜いて二太刀三太刀切りつけた。二つになったかと見れば煙のように消え、あたりは真の闇。善兵工は一目散に逃げ帰ったという。
原典より
今から八十年ばかり前、入生田の近野善兵工さんが三十代の頃でありました。—— 高畠町伝説集(昭和三十二年(1957)刊/高島高校文芸班編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
高畠町伝説集(昭和三十二年(1957)刊/高島高校文芸班編)
山形県東置賜郡高畠町(屋代・亀岡・和田・二井宿・糠野目・高安・露藤ほか各地区。一部は隣接の米沢市・南陽市宮内・長井市)に伝わる伝説を、神仏/人物/怪異/動物/什物/地物/地名/地誌 の八篇に分類して集成する。屋代神社の鬼女縁起、犬の宮・猫の宮、安久津八幡、狐狸むじなの化かし、天狗・怪物・沼の怪、青葉の笛や応挙の幽霊画、伊達・上杉の城館跡や古戦場、地名由来など、高畠の地に根ざした怪異・霊験・由来譚を地区つきで網羅する。