光空の身代わりに矢を受けた普賢菩薩
どんな伝承か
十一世紀初頭に成った『本朝法華験記』の光空法師の話には、将門の近親者という兵部郎中平公が登場する。平公は極悪不善の武士で、近江の金勝寺の僧光空に帰依して家に住まわせていたが、妻が光空と通じているという噂を信じ、光空を山中に連れ出して弓で腹を射た。しかし矢は外れて当たらず、その不思議に恐れをなして光空を許した。その夜の夢に白象に乗った金色の普賢菩薩が現れ、脇腹に多くの矢が突き立っている。訳を問うと法師の身代わりに受けたものだといい、平公は涙ながらに悔いたが、間もなく光空は姿を消した。再び夢に現れた普賢は、無実の噂で自分を殺そうとしたので去ると告げ、光空の行方は知れなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
将門伝説——民衆の心に生きる英雄(梶原正昭・矢代和夫・1966年(昭和41年))
『将門伝説——民衆の心に生きる英雄』は、梶原正昭と矢代和夫が一九六六年に著した平将門の伝説の研究書である。茨城県岩井町をはじめ各地の伝説地の踏査と、縁起・古記録・地誌をもとに、将門の怨霊と調伏、七人の影武者、子の良門や娘の如蔵尼、寵妃桔梗ら落人の行方、後裔を名告る家々、伝説の伝播と文芸化をたどる。序章と三篇からなり、巻末に青森県から鳥取県までの伝説分布と、寺社縁起など関係文献の抄録を附録として付す。