小町の霊に祈り黒髪に戻った局
どんな伝承か
政子の呪いで白髪になった丹後の局は、かくれ住む小野村が絶世の美女小野小町の生まれた里だと聞き、面影よ変わらずにあれと願う古歌を捧げて、十七日の間ひたすら小町の霊に祈った。いつまでも若く美しくありたいという願いは通じ、満願の日、白髪は一夜のうちに元の黒髪へ戻っていた。そのお礼に局が建てたのが小町神社で、局が産んだ頼朝の子はのちに九州へ移って島津家の祖となったとも付け加えられる。以来、小町の霊に祈れば白髪が黒くなると言われ、若白髪に悩む人は願いがかなうと五色の糸を供えて礼参りをしたが、今は訪れる人もない小さな社になっている。
原典より
するとどうだろう。満願の日、その白髪はまた一夜にして元の美しい黒髪に戻っていたのである。—— 神奈川の史実と伝説(小森良章・1975年(昭和50年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川の史実と伝説(小森良章・1975年(昭和50年))
『神奈川の史実と伝説』は、新聞記者から県政の仕事に転じた小森良章が昭和五十年に著した郷土史の読み物である。倭建命の東征から鎌倉幕府の滅亡までを範囲に、神奈川県内に残る伝説を十一の篇にまとめ、走水の弟橘姫や足柄山の金太郎などを取り上げる。各篇は伝承地を副題に掲げ、伝説とその背景にある史実を結びつけて語り、古事記や吾妻鏡などの記録を引きながら著者の推測も交えている。