全国に広がった小町伝説のわけ
どんな伝承か
小野小町は古今和歌集に歌を残す平安の歌人だが、その出自は定かでない。小野貞樹との贈答歌から二人は近い縁にあったとされ、現在は小野篁の二男、出羽守良真の二女とする説が有力である。いずれにせよ有力貴族の末流であり、いくら小野の一族を捜しても相模国に関係したという証拠は見つからない。つまり厚木市小野を小町の出生地とする伝説には根拠がない、と筆者は説く。全国に小町伝説が残る理由については、近江国の小野郷を本拠とする小野氏の女系が巫子として各地を回り、やがて遊行女婦や歌比丘尼と呼ばれる姿となって「小野小町の流れを汲む女巫子」と名乗ったためだとする近世の研究を紹介している。
原典より
しかしいくら小野の一族を捜してみても相模国に関係したという証拠はみつからない。—— 神奈川の史実と伝説(小森良章・1975年(昭和50年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川の史実と伝説(小森良章・1975年(昭和50年))
『神奈川の史実と伝説』は、新聞記者から県政の仕事に転じた小森良章が昭和五十年に著した郷土史の読み物である。倭建命の東征から鎌倉幕府の滅亡までを範囲に、神奈川県内に残る伝説を十一の篇にまとめ、走水の弟橘姫や足柄山の金太郎などを取り上げる。各篇は伝承地を副題に掲げ、伝説とその背景にある史実を結びつけて語り、古事記や吾妻鏡などの記録を引きながら著者の推測も交えている。