九十九谷を数えて杖を残した弘法の松
どんな伝承か
川崎市多摩区高石(現・麻生区)には弘法の松と呼ばれる松があり、弘法大師がついてきた杖から根が生えたものと伝えられる。昔、大師がこの地に寺を建てようとして辺りを見渡したが、谷の数が九十九しか見えなかったため建立を思いとどまり、杖をその場に突き立てて高野山の方へ旅立ったのだという。杖が根づいて木になったという伝えは、港区元麻布の善福寺の親鸞上人の杖銀杏、宮代町百間東の西光院の行基の逆さ菩提樹、台東区谷中の領玄寺の日享上人の杖桜など、数多く伝わっている。
原典より
川崎市多摩区高石に、弘法の松というものがあって、弘法大師がついてきた杖に根が生じたものという。—— 武蔵の伝説(大島建彦/渡辺千佳子・日本の伝説・1976年(昭和51年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
武蔵の伝説(大島建彦/渡辺千佳子・日本の伝説・1976年(昭和51年))
『武蔵の伝説』は、大島建彦と渡辺千佳子が昭和五十一年に著した伝説集である。埼玉県・東京都と神奈川県の一部にあたる旧武蔵国の伝説を、地誌・紀行・社寺縁起・区市史や『埼玉県伝説集成』などの文献と土地の口碑から集め、項目ごとに出典を添える。『日本伝説名彙』の六部門に家・村と祭礼・行事を加えた八部に分け、巻頭の「はじめに」で伝説の分類の方法を論じている。