女躰氷川社の片目の魚と盲目の祟り
どんな伝承か
浦和三室の女躰氷川社の御手洗の池に棲む魚はみな片目だったと伝わる。松浦静山の『甲子夜話』も、池は四本竹の前に形ばかり残り魚は皆一眼だと記し、江戸小舟町の者が鯉を商おうと大網を下ろすと大蛇ばかりが上がって魚が取れず恐れて止めたと載せる。『大宮市史』によれば、承応年中に江戸の町人が無断で網をかけると片目の魚は取れず小蛇が三笊も上がった。貞享年中には見沼の運上を請け負った京屋仁兵衛の手代七兵衛が仕事中に盲目となり、江戸へ送った荷に片目の鯉が混じっていたと知って返上し参籠すると、霊夢のお許しを得て両眼が開いた。享保の新田開発で水を落としたときも片目の魚は一匹もかからなかったという。
原典より
調神社の御手洗の池は、俗にヒョウタン池とよばれていた。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。