狐に髪を食いちぎられた男
どんな伝承か
昔、ある男が川原で仕事をしていると、狐が頭に朴の葉をのせ、川の藻を丸めて赤子の形を作っていた。人を化かすつもりだなと思った男は小石を投げつけ、見事に命中させた。すると赤子の泣き声がして、立派なおかみさんが子供を抱いて憤然と現れ、人の子に石を投げて殺したと詰め寄る。狐だろうと言っても相手は怒るばかりで、眉に唾をつけて見ても人間にしか見えない。やむなく詫びると、頭を剃って坊主になれと言われ、知り合いの寺で和尚に頭を剃ってもらった。剃り方があまりに痛くて途中でやめたくなったが、どうにか剃り終えて家に帰り、正気に返ってみると、髪は剃られたのではなく食いちぎられていたという。
原典より
昔、ある男が川原で仕事をしていると、狐が頭に朴の葉をのせて、川の藻を採ってはまるめて赤子の形をつくっている。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。