馬糞のぼた餅を止めようとして肥溜をのぞく
どんな伝承か
秩父郡東秩父村、旧槻川村に伝わる話だという。ある人が夜道を歩いていると、狐が重箱に馬糞を詰めているのを見つけた。妙なことをするものだと木陰に隠れて見ていると、狐はやがて重箱を風呂敷に包み、木の葉を頭にのせて女の姿に化け、村の方へ出かけて行った。彼は気づかれないよう後をつけていくと、狐は一軒の農家に入り込んだ。戸の隙間からのぞくと、家の者が狐からもらったぼた餅をおしいただき、いままさに口にしようとしていた。彼は驚いて馬の糞だ、食うなと叫んだ。そのときにはすでに夜も白々と明けていた。通りかかった人に声をかけられて正気に戻ってみると、自分は肥溜小屋をのぞきこんでいたのだったという。
原典より
ある人が夜道を行くと、狐が重箱に馬糞をつめている。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。