木の葉の薬代を受け取った産婆
どんな伝承か
熊谷に内川という産婆がいた。ある夜更け、戸を叩いて「大原の者だが嫁が難産で困っている」と告げる男があり、産婆はすぐ人力車に乗って駆けつけた。ところが翌朝、昨夜の車夫が訪ねてきて、もらった車代が木の葉になっていたと言う。産婆が受け取った薬代を確かめると、こちらも木の葉に変わっていたという。編者は、越後南蒲原郡の矢田で産婆が狐の産を扱い、礼の小判が木の葉になったという類話をあわせて挙げている。
原典より
ある時、熊谷の内川某という産婆の宅を夜ふけに戸を叩く者があり、「私は大原から来た者だが、嫁が今難産で困っている」とのことであった。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。