お堂の踊りを暴いた浦山の犬仙太
どんな伝承か
大滝村の村はずれに小さなお堂があった。ある夏、夜が更けるとそこから笛や太鼓の賑やかな音が聞こえてくる。若者たちが板戸の隙間からのぞくと、二十五、六人もの見知らぬ人々が歌い踊っていた。踊りが終わって片づけるとき、誰かが「この踊りを浦山の仙太に話すな」とささやくのを、若者たちは聞き逃さなかった。浦山に仙太を訪ねると、それは人ではなく犬だった。翌晩、踊りの始まる頃を待って若者たちがこの犬をお堂へ放つと、激しい格闘が起こり、血まみれの仙太が出てきたあとには狐や狸の死骸が幾重にも重なっていたという。
原典より
大滝村の村はずれに小さなお堂が建っていた。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。