舟の形に築かれた業平の塚
どんな伝承か
本所中之郷八軒町の南蔵院の境内には、舟の形をした古墳があり、業平塚と呼ばれていたが、のちに壊されてしまった。名所記は、この地で舟が壊れて業平が死んだので塚に葬り、形を舟に残したのだと記す。境内には木像を業平天神として祀る祠もある。伝えによれば、業平は二条の后との一件で勘気を蒙って東国へ下り、入間郡三芳野の里で宿を借りた家の娘と契って日を送った。やがて田舎住まいに飽き、春の日に舟を出して隅田川の景色を眺めていたところ、突風に襲われて舟が覆り、元慶四年五月二十八日、五十八歳で溺れ死んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
江戸傳説(佐藤隆三)
『江戸傳説』は、佐藤隆三が著した江戸と東京の伝説集である。将門の首塚、番町皿屋敷、お玉ヶ池、置てけ堀、縁切榎、矢口渡など、市中と近郊の塚・池・坂・井戸・寺社にまつわる由来譚や、化け狐・猫又の怪異を、『江戸名所図会』『将門記』などの記録を引きつつ語る。目次に四十の項を番号順に並べ、口絵の図絵と目次番号に対応した伝説分布図を添え、巻末に資料参考書目を付す。