鰻を獲った二人を襲った立沢の腹痛
どんな伝承か
龍法院の山の中には立沢という急流の小沢があり、鰻がたくさん棲んでいるが、獲ると祟りがあると言われていた。鰻は竜神の使いだからだという。栗和田の小林喜一郎は若いころ、そんな馬鹿なと友人と鰻獲りに出かけた。一匹獲り、二匹目を追ううちに離ればなれになると、急にひどい腹痛に襲われた。大声で呼びながら友人の所へ行くと、相手も真っ赤な顔でうなっていたが、顔を合わせたとたんに痛みは消えた。また離れると痛み出し、相手の頭が少しでも見えると治まる。気味が悪くなった二人は鰻を捨てて村へ逃げ帰った。叫び声は遠くの村まで届き、人々が何事かと出迎えたという。
原典より
ところが二人が顔を見合わせると、不思議に腹痛はけろりとなおってしまった。—— 秩父・奥武蔵伝説たわむれ紀行(神山弘・1984年(昭和59年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父・奥武蔵伝説たわむれ紀行(神山弘・1984年(昭和59年))
『秩父・奥武蔵伝説たわむれ紀行』は、神山弘が一九八四年に著した伝説探訪の紀行である。越辺川の流域や高麗郷、富士山のある村々、竹寺、武甲山と三峰山、宝登山、釜伏峠と粥新田峠など埼玉県西部の山村を歩き、土地の古老からの聞き書きと『新編武蔵風土記稿』などの記録を交えて、竜や大蛇、天狗、幽霊、将門などの伝説を語る。土地ごとの章に小見出しを立てた随筆体で、著者の前著『ものがたり奥武蔵』で扱わなかった土地を主にとりあげる。