人を遠くへ連れ出す海辺のいそぎつね
どんな伝承か
九十九里町のどの地区にも共通して伝わる話。海辺に近い森や林に棲むきつねを『いそぎつね』と呼び、夕暮れになると人をだまして騒ぎを起こすとされた。そこで子供たちは、六つ時まで磯にいるなとよく言い聞かされた。いそぎつねは子供や大人を一ッ松や五井のあたりまで連れ出したこともあり、子供が川の口のひどく危ない所を不思議にも通り抜けたときなどは、いそぎつねの仕業だと言われた。漁師は漁を終えて陸に上がると沖あがりの酒をふるまわれるが、酔って魚を提げ磯伝いに帰る途中でいそぎつねに化かされ、一宮あたりまで歩いてようやく酔いがさめ、魚も消えていて初めてだまされたと気づいたという。
原典より
いそぎつねは、夕ぐれになると人々をだまして、人騒がせないたずらをしました。—— 九十九里町誌 各論編 下巻(九十九里町誌) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
九十九里町誌 各論編 下巻(九十九里町誌)
『九十九里町誌 各論編 下巻』は、千葉県九十九里町の町誌各論編下巻から、第八章「口頭伝承」の第一節「昔話」を収めたものである。作田・片貝・真亀・藤下・西野・粟生など町内の地区に伝わるきつね・むじな・カッパ・大蛇の話や、屋号の由来、天王様ときゅうりの禁忌、将軍の鷹場にまつわる話を、です・ます調の語りで記す。見出しに地区名を添えて話を並べ、後半には神かくし・いそぎつね・船幽霊など町内に共通する話をまとめる。