秘儀だった和布刈神社の和布刈神事
どんな伝承か
門司区門司の和布刈神社では毎年旧暦元日に和布刈神事が行われる。午前三時ごろ、その年最初の干潮を迎えると、身を清めた三人の神職が烏帽子に狩衣姿で境内の石段から海峡へ下り、鎌でワカメを刈り取って土器に盛り神前に供える。昔は朝廷に、藩政時代には藩主に献上された。鎌を持つのは宮司かその世継ぎで、一子相伝の儀式とされる。供の神職が抱える大松明は二種の竹を束ねてひと月乾かしたものである。太平洋戦争前までは見たら目がつぶれるといわれ、海峡両岸の家々は夜十時ごろから戸を閉ざし、船も灯を消して、公開されない秘儀だった。神功皇后が武運と航海の安全を祈って新春のワカメを供えたという故事に由来すると伝えられる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
北九州市史 民俗(北九州市・北九州市史)
『北九州市史 民俗』は、北九州市が編んだ市史の民俗編である。ここに収めるのはその第三編「信仰伝承」第一章「信仰」の第二節以降で、門司・小倉・若松・八幡・戸畑の各区に伝わる聖地と忌地、神仏信仰、神事と法会、巡礼、巫者・祈禱師、信仰集団、狐憑きや犬神などの憑霊・霊異現象を記す。節ごとに地区と地名を挙げて事例を並べる編み方で、祟る石や産女石、落人の墓なども忌地の項に見える。