灯火を消した闇で行う御葭流しの秘儀
どんな伝承か
著者はかつて尾張の津島神社の祭りを見学したことがある。御葭流しの行事の肝心な部分はすべて禰宜をはじめとする数人の神官だけで行う秘儀であった。夜十時ごろになると町じゅうを見回って灯火を残らず消させ、真っ暗闇のなかで神殿から御葭を抱えて運び出し、何か唱えごとをしながら担いで回ったのち、川に投げ入れるのである。著者は、村人が籠っている間に常人には見せない神秘な行事が行われるという信仰の例として、これを阿波のヤギョウサンや播磨の日ノ岡の夜行と並べて挙げている。
原典より
御葭流しの行事の中心部分はすべて禰宜以下の神官数名の秘儀であり、夜一○時ごろ町中を警護してまわっていっさい灯火を消させ、暗黒の中を、神殿から、御葭をかかえ出して、…—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。