六百歳の海女とほら貝祭
どんな伝承か
乙丸正ノ浦の貴船神社は四月十五日が祭礼で、これをほら貝祭と呼ぶのは次の言い伝えによる。天明二年の五月、芦屋の陶器商人が奥州の津軽あたりまで商いに出て山中で道に迷い、一軒家に泊めてもらった。宿の主婦は自分が正ノ浦の海女だと明かし、寿永のころ安徳天皇へ朝夕に魚介を運んでいたこと、ホラ貝の身を食べてから老いなくなり、諸国を巡って六百歳になったこと、貝は故郷の松の根もとに埋めたことを語った。商人が帰って掘ると貝は本当に出てきた。これを御神体として納め、祭りの日にこの貝で酒を飲むと長生きするという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
北九州市史 民俗(北九州市・北九州市史)
『北九州市史 民俗』は、北九州市が編んだ市史の民俗編である。ここに収めるのはその第三編「信仰伝承」第一章「信仰」の第二節以降で、門司・小倉・若松・八幡・戸畑の各区に伝わる聖地と忌地、神仏信仰、神事と法会、巡礼、巫者・祈禱師、信仰集団、狐憑きや犬神などの憑霊・霊異現象を記す。節ごとに地区と地名を挙げて事例を並べる編み方で、祟る石や産女石、落人の墓なども忌地の項に見える。