巡礼娘の入水と砂原の弁天池
どんな伝承か
北埼玉郡大利根町砂原での話である。延享二年の春の終わりごろ、関東に大雨が降り、砂原の西を流れる利根川がみるみる増水してついに堤防が切れ、田畑は水の底に沈んだ。土を詰めた俵を積んでも濁流に流され、人びとが途方に暮れていたところへ、長い巡礼の旅から故郷に戻った娘が通りかかった。わが家が流されたのを見た娘は、これを水神の怒りと悟って、あっという間に濁流に身を投げた。すると流れは鎮まり、決壊口をふさぐことができた。人びとは娘を弁財天としてまつって供養し、切れ所の近くにできた大きな池を弁天池と呼んだという。
原典より
巡礼娘の入水によって、水神の怒りも鎮まったのであろう。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成——分類と解説 中』は、韮塚一三郎が編んだ埼玉県の伝説集の中巻で、上中下三巻のうち歴史伝説を収める。地名・屋敷・家系・聖地・城や堤や橋・神仏・神体と宝物・偉業・事件と紛争の九章に分け、県内各地の伝説を『新篇武蔵風土記稿』などの文献と土地の人からの聞き取りによって集めている。一話ごとに所在地と出典または資料提供者を記し、同じ類型の話をまとめた後に柳田国男らの説を引く〈解説〉を置く。