大蛇が山を崩した煤川
どんな伝承か
秩父の煤川の下の集落の裏山で、ある日大蛇が女の姿になってモミの大木に腰かけ、子に乳を飲ませていた。弓の名人アクタッ太郎左衛門がこれを見つけ、上の集落の坂の上から射て傷を負わせた。怒った大蛇は巨体の力で山をひっくり返して向かいの山にぶつけ、下煤川を押しつぶしてしまった。その祟りを恐れた上煤川の人々が祀ったのが白蛇大権現諏訪大明神だという。下煤川には夏になると小さいのにひどく痛く刺すススガワアブが出て、これは山崩れで死んだ人々の亡霊だと伝えられている。
原典より
このアブはこの山崩れで死んだ人びとの亡霊だという。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成——分類と解説 中』は、韮塚一三郎が編んだ埼玉県の伝説集の中巻で、上中下三巻のうち歴史伝説を収める。地名・屋敷・家系・聖地・城や堤や橋・神仏・神体と宝物・偉業・事件と紛争の九章に分け、県内各地の伝説を『新篇武蔵風土記稿』などの文献と土地の人からの聞き取りによって集めている。一話ごとに所在地と出典または資料提供者を記し、同じ類型の話をまとめた後に柳田国男らの説を引く〈解説〉を置く。