袋中が訪ねた若狭殿の妻
どんな伝承か
袋中上人の『琉球神道記』に載る、海から戻った若い妻の話。ある女が姿を隠して三十二年目に、海から戻って来た。あまりに若く見えるので夫までが初めは信じなかったが、女は、自分はただ二三日、野原で遊んでいたばかりで年を取るわけがないと言い、閨中のみそかごとまで語り出したので、もう疑うことができなくなったという。よほど有名な古い話で、那覇の港に接した若狭町の若狭殿というのがその家であった。袋中自らもその六代目の子孫を訪ねてみたと記しており、それが既に三百五十年の昔だという。竜宮(ニルヤ)にまつわる浦島型の伝説である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第1巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第1巻』は、柳田国男の著作を集めた著作集の一巻である。椰子の実の漂着から日本人の渡来と稲作を海の道に求める論考と、海神宮考・みろくの船・根の國の話・寶貝のこと・稻の産屋などの諸篇、大正期の南島旅行に基づく『海南小記』、昭和二十六年八月の自序をもつ『島の人生』を収める。いずれも海と島を舞台に、ニライカナイや宝貝、漂着や島の復興をめぐる民俗と歴史を論じている。