駿馬に恋された姫と養蚕の起原
どんな伝承か
説話の中の長者で、極度の富貴に住する者はしばしば満能という名であった。著者が初めて炭焼藤太の話を書いたのち、八戸の中道等が同地のイタコから正月十六日のオシラ神遊びの詞曲を聞き、手録した一篇にも、やはり「まんのう」長者とあった。イタコは奥州の村々で桑の木に刻んだ男女の神に仕え、神託を宣ることを業とする盲目の女性である。ただしこの曲に説くところは炭とは何の縁もない養蚕の起原で、長者の厩の第一の駿馬せんだん栗毛が、ただ一人ある姫君に恋慕して命を失い、その霊が姫を誘って天に昇り、のちに白黒二種の毛虫となって現れたのを、十二人の女房と八人の舎人、こかい母、桑取り王子となって養うというのがその大要である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第1巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第1巻』は、柳田国男の著作を集めた著作集の一巻である。椰子の実の漂着から日本人の渡来と稲作を海の道に求める論考と、海神宮考・みろくの船・根の國の話・寶貝のこと・稻の産屋などの諸篇、大正期の南島旅行に基づく『海南小記』、昭和二十六年八月の自序をもつ『島の人生』を収める。いずれも海と島を舞台に、ニライカナイや宝貝、漂着や島の復興をめぐる民俗と歴史を論じている。