長命の流人・入墨の長吉
どんな伝承か
近藤富蔵が着いた文政十年閏六月の八丈島には、前々からの流人が二百十六、七人ほど溜まっていた。前年十一月の恩赦で古い罪人が数十名島を出たあとでも、なおそれだけの人数が残っていたのである。近ごろは送られてくる者が少しずつ増え、いわゆる甘藷政策のおかげか、流人の生きる年数も延びたらしい形跡が見える。一番の古顔は芝無宿入墨の長吉で、安永二年に流され、島に五十七年いて文政十二年に死んだ。次に古いのが両替町一丁目の火消人清次郎、天明八年に来てから四十三年生きていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第1巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第1巻』は、柳田国男の著作を集めた著作集の一巻である。椰子の実の漂着から日本人の渡来と稲作を海の道に求める論考と、海神宮考・みろくの船・根の國の話・寶貝のこと・稻の産屋などの諸篇、大正期の南島旅行に基づく『海南小記』、昭和二十六年八月の自序をもつ『島の人生』を収める。いずれも海と島を舞台に、ニライカナイや宝貝、漂着や島の復興をめぐる民俗と歴史を論じている。