気仙の村に残る兎の杵
どんな伝承か
柳田国男は、気仙の村々で今も用いられる手杵の功用を尋ねている。上下に頭のある真っ直ぐな杵で、分かりやすいように平素は兎の杵などと名づけているものである。兎の杵は十何年か前に、天草下島の大江あたりで、麻紋付の普段着の老女が使っているのを見て驚いたままであったが、この辺の農家では今もただの普通の器具であり、餅搗きには二本で搗くこともあるという。これに対して柄の長い方の杵を打杵と呼んでおり、打杵は重いなどというところを見ると、これには大小の種類は無いものらしい。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。