万石浦の遠浅に隙間なく張られた建網
どんな伝承か
牡鹿半島を一周し、渡波から北上川口の旧遊地の空へ向かおうとしたとき、新たな見聞を得た。十何年も前から干拓事業の問題となり、陸と言おうか水面と言おうか、どちらも通用しそうな万石浦の遠浅に、青森湾頭で見たものと同じ形の建網が、ほとんど隙間もなく張られていたのである。さらに進んだ遠田郡の水沢地でも、何のためにあるかを今まで考えてもみなかった大小の沼に、依然として同じ形の建網が用いられていた。この地方の漁業は進取的ではなく、慣習の惰性としか説明のしようがない建網であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第2巻』を全331話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。