猟師を見つめて消えた大鹿
どんな伝承か
松崎の旅館で、船田の百姓であった按摩から聴いた話である。ある鉄砲の名人が山に入ったところ、大きな鹿がこちらへ近寄り、じっと自分を見た。その顔が笑うように見えて身の毛が立った。鉄砲を打ちかける暇にもならず、眼を見合わせているといつまでも動かずにいる。そこで試みに少し眼をそらしたところ、その間にたちまち見えなくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第3巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第3巻』は、柳田国男の紀行・日記・随筆を集めた著作集の一巻である。相模・武蔵の村々を歩いた「水曜手帖」、昭和二十三年八月の自序を持つ「北国紀行」、明治四十三年の「五十年前の伊豆日記」、国際聯盟の委任統治委員会に勤めた大正十一年の「瑞西日記」と「ジュネーブの思ひ出 その他」を収める。後半の「菅江真澄」は昭和十七年二月の序を付け、真澄の著述と旅の跡を年を追ってたどり、写真解説を添える。