田島神社の松浦佐用媛の望夫石
どんな伝承か
柳田は先年、肥前の田島神社に参詣して松浦佐用媛の望夫石を拝んできた。長く思い描いていた立ち姿とは似ても似つかず、よそにあれば亀石とでも呼びそうな中高の石であるのに、神官たちは泣き伏した姿のままだと、まるで肉体が化石したかのように説いていた。そこまで骨を折らずともと思ったが、聞き手の側がそれで承知しない時代なのだから仕方がないという。柳田はこうして多くの姥石の来歴がますます荒唐無稽になっていくのを惜しんでいる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。