池谷村・機織り娘の窓に来て飯を乞う異獣
どんな伝承か
『北越雪譜』に見える話である。池谷村に機織りの上手な娘がおり、問屋から名指しで縮を注文されていた。雪の消え残る窓の下で機を織っていると、窓の外に立つ者がある。猿のようだが顔は赤くなく、髪の毛が長く垂れ、人より大きな異獣が内を覗いていた。家の者は皆山稼ぎに出て娘一人だったので逃げようとしたが、腰を機に繋いでいて動けない。やがて異獣は竈の下に立ち、しきりに飯櫃を指して欲しがるので、飯を握って二つ三つ与えると嬉しげに持ち去った。その後も家に人のいない時は折々来て飯を乞い、ついに馴れて恐ろしいとも思わなくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。