牛込の高台に響く天狗囃子
どんな伝承か
山中には魔所と呼ばれる場所があり、木を伐ると急に病むとか、深夜に大勢が大木を伐り倒す音がするといった怪異が語られてきた。天狗の囃子もその一つで、柳田は自分の住む牛込の高台でも、深夜にしきりと囃子の音がすると聞かされたと述べる。東京のそれはテケテンという太鼓だけだが、金沢では笛が入ると泉鏡花が語り、遠州の秋葉街道では同じ音を狸の神楽と呼んで、狸が演奏するのを見たと言う者までいた。狸は物真似が巧いと信じられ、汽車の音も杜氏の歌も真夜中に再現させるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。