山男と相撲を取った村の樵夫
どんな伝承か
五城目辺のある村の樵夫は、かねて田舎相撲の心得があった。ある年、山に入って木を伐り、担ぎ上げようとしたとき、不意に後ろから待てという者がある。振り返って見れば山男であった。相撲を取ろうというので木を傍らに下ろして取り組み、一番は投げると強いと褒められ、二番目はわざと負けてやった。山男はこの者を待たせて仲間を二、三人誘い来て取らせ、それが例となって折々出会うようになる。やがて家へ遊びに行くから餅を搗いておけと言われ、一斗ほどの餅を振る舞うと数人の山男が終日遊んで踊った。その後も酒をせがみに来るので、樵夫は煩わしさに堪えず病みついて長く臥せったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。