神楽岡の荒れ家に現れた蜘蛛の妖怪
どんな伝承か
『屋代本平家物語』の土蜘蛛退治をふまえて作られたと思われるのが、絵巻『土蜘蛛草紙』の物語である。源頼光が渡辺綱らを連れて北山のあたりの蓮台野を通ると、髑髏が一つ空を飛んでいった。その行方を追うと神楽岡の荒れ果てた家に行き着いた。中に入ると、台所に二百九十歳という老女の妖怪が現れたのを手始めに次々と妖怪が出て、明け方近くには美女の妖怪が襲ってきた。頼光が斬りつけると美女は消え、刀の先には白い血がおびただしく付いていた。血の跡をたどると西の山奥の洞窟に至り、現れた怪しい者と戦って首をはねると、その正体は蜘蛛であったという。
原典より
文楽の『大江山酒呑童子』「土蜘蛛退治の段」は、さまざまなカラクリが用意された楽しい作品である。—— 異界巡礼(小松和彦) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
異界巡礼(小松和彦)
『異界巡礼』は、小松和彦が著した民俗学の論集である。狐が人に化ける方法と如意宝珠、蓮如絵伝の異人、鬼退治譚と怨霊、家の盛衰をめぐる民話、夢信仰、巫女と陰陽道、洞窟や龍宮の他界観、人を神に祀る信仰、神隠しなどを、昔話・説話・絵巻・お伽草子と高知県物部村などでの調査をもとに論じる。論考と随想を部に分けて並べ、「民俗のランドスケープ」の部には妖怪、凧上げ、祓い、霜月祭り、呪い人形をめぐる小文を収める。