グリン様にさらわれた子守りの少年
どんな伝承か
松山義雄『山国の神と人』が伝える下伊那郡遠山谷の話。子どもがかどわかされるのは多くは黄昏時に起こる現象だという。上村中根の、昭和三十三年当時四十五歳ほどの男は、子どものころ隣家の子の守りをしていた。夕方、赤子を返して自分の家へ帰る道で行方不明になり、グリン様すなわち天狗に連れ去られたといわれた。村中で探して歩いたが見つからず、三日後、少年は自宅で寝ているところを発見された。三日間は山ばかり歩いていたそうである。中根や上村の下栗辺で夕方の隠れんぼが固く戒められていたのは、こうした災いのためであった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
異界巡礼(小松和彦)
『異界巡礼』は、小松和彦が著した民俗学の論集である。狐が人に化ける方法と如意宝珠、蓮如絵伝の異人、鬼退治譚と怨霊、家の盛衰をめぐる民話、夢信仰、巫女と陰陽道、洞窟や龍宮の他界観、人を神に祀る信仰、神隠しなどを、昔話・説話・絵巻・お伽草子と高知県物部村などでの調査をもとに論じる。論考と随想を部に分けて並べ、「民俗のランドスケープ」の部には妖怪、凧上げ、祓い、霜月祭り、呪い人形をめぐる小文を収める。